「宇宙は何で出来ているのか」----素粒子物理学で解く宇宙の謎
村山 斉著
第三章「4つの力」の謎を解く
<重力、電磁気力、強い力、弱い力ー量子力学>
自然界では、物質間でいくつかの力が働いています。
その一つは、「重力」です。物が地面に落ちることや、自分が地に足をつけて歩くことなど。その不思議な現象を、アインシュタインは「重力が空間を曲げるのだ」と説明した。
もう一つは、磁石のS極とN極、電気のプラスとマイナスが引き合う現象です。
重力と違って、こちらは「引力」だけではありません。S極とS極、マイナスとマイナスなどの場合は、逆に「斥力」が働いてお互いが離れようとします。
かつて電気と磁石の力はまったく別のものだと思われていた。それが同じ力であると見抜いて「電磁気力」に統一したのは、19世紀の物理学者マクスウェルです。電磁気力はボソンの一種である。
自然界で働く力は、目に見えるマクロの世界では、重力と電磁気力があり、それ以外に陽子と中性子(と、それを構成するクォーク同士)をくっつける力があり、
名前は「強い力 strong interaction 」=「強い相互作用」
もう一つ、「弱い力 weak interaction 」です。
弱い力はすべての粒子に働きます。
自然界に存在するこの四つの力を、たった一つの原理で説明していきます。
★力は粒子のキャッチボールで伝達されると考える
★質量(m)はエネルギー(E)に変えられるという大発見。
反対にエネルギー(E)は質 量(m)にも変えられる(物質の質量は変化する。)「質量保存の法則」が覆された。
「光速度不変の原理」 光速は宇宙の「制限速度」
★ 性質は同じで電荷が反対の「反物質」
1955年、反陽子と反中性子も発見された。(バークレーの粒子加速器)光速近くまで加速した陽子を標的にぶつけることで、反陽子が生まれ、つくられた反陽子が別の陽子に出会うと、こんどは 対消滅してエネルギーに戻りました。さらに、そのエネルギーはまた質量に変換され、さまざまな種類の粒子が生まれます。
アインシュタインの理論どおり、「質量はエネルギーになり、エネルギーは質量になる」のです。
★ 不確定性関係ー位置と速度は同時に測れない?
ミクロの世界では、粒子の正確な位置と速度を同時に測定することができない。(ハイゼンベルク)
△×(位置の曖昧さの幅)×△p(運動量の曖昧さの幅)〉h(ブランク定数)
私たちの身の回りにある物体も、顕微鏡の解像度をあげてズームインしていくと、実はわずかに揺らいでいます。
★ エレクトロニクス技術として実用化された「トンネル現象」
江崎玲於奈氏のノーベル賞を受賞したトンネルダイオードも、この原理をおうようしたものです。
△E(エネルギーの曖昧さの幅)×△t(時間の曖昧さの幅) 〉h(プランク定数)
「時間」の幅を狭めると、「エネルギー」の幅が大きくなる。逆に「時間」の幅を広げると、「エネルギー」の不確定性は小さくなるのです。
★コペンハーゲン解釈ー神はサイコロを降るらしい
撃ち込んだ電子は一つ一つが「波」の広がりを持っており、それが壁に当たって観測された瞬間、一点にキュとまとまる。つまり観測者がそれを「見る」までは位置が決められないということ。
電子にかぎらず、あらゆる粒子は、観測されていないときは「波」なので「どこにあるか」は決められない。ーコペンハーゲン解釈
★ 同じ場所に詰め込めるボソン、詰め込めないフェミにオン
「パウリの排他原理」
電子、ニュトリノ、クォークなどの素粒子は同じ場所に一つしか置けません。一方、力を伝えるボソンは、同じ場所にいくらでも詰め込める。これは両者の「スピン」の違いによるものです。スピンとは、素粒子の回転を表す物理量のこと。
フェミオンとボソンのスピンは何がちがうのか?
スピンが反整数(奇数÷2)になるのがフェミオン、整数(偶数÷2)になるのがボソンです。
特殊相対性理論と量子力学を融合し、それをさらに電磁気学で統一したのが「量子電磁力学」なのです。
★原子と原子は電磁気力でくっついている
電磁気力がないとあらゆる物質が原子レベルまでバラバラになってしまうので、私たちの体も存在しません。
「素粒子が力を伝える」とはどういうことか?
★ 電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる
荷電粒子(電子や陽子など電荷を持つ粒子)のまわりに電場が生じるとはかんがえません。そこで「光子」を交換していると考えます。「光子」は光として目に見えません。そのため、「仮想光子」とか、「バーチャル光子」とよぶこともあります。
その光子をつくるにはエネルギーが必要です。
なにもない空間からエネルギーを借りてきて、光子を作ります。荷電粒子がつくった光子を吐き出し、それをほかの荷電粒子が吸い込むことで、両者の間に力が働く。量子電気力学では電磁気力をこのような光子の交換として考えるのです。
★ 電磁気力の届く距離も不確定性関係で決まる
距離が近い荷電粒子の間では、高エネルギーの光子をやりとりできるということです。量子力学では、荷電粒子同士の相互作用を、このように「光子の交換」で説明します。これを図示するのが、「ファイマン・ダイヤグラフ」です。
ファイマンは、朝永振一郎さんらとほぼ同時期に量子電気力学を完成させ、1965年にノーベル賞を共同受賞した物理学者です。
★物理学史上もっとも精密な理論値
1933年ー電子1つの磁石の強さを「g=2」と予言していた。
しかし実際にg因子の大きさを計測してみると、ピッタリと整数の2にはなりません。0.1%ほどのズレがあったのです。そのズレを理論的に説明したのが、朝永振一郎、ファインマン、それにシュウィンガーの3人がほぼ同時期に指摘したのは、「バーチャル光子を放出した電子が、それを再び吸収することも考えなければいけない」ということです。
このズレを8次まで補正して計算したのが、コーネル大学の木下東一郎教授のグループです。スーパーコンピューターで何ヶ月もかけて計算した結果、次のような理論値が出ました。
g/2=1.001159652182
一方、ハーバードの実験グループが出した計測値は次のようです。
g/2=1.001159652180
これはおそらく、物理学史上最高精度の一致でしょう。
バーチャルな光子の交換という話は、確かに眉唾な感じがするところもあるのですが、それを受け入れさえすれば、ここまで精密な予言能力を持つ理論をつくることができます。これが、「量子場の理論」であり、量子電気力学の成果です。

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