2011年2月27日日曜日

弱い力


第4章  湯川理論から小林・益川理論へ
強い力、弱い力
<ミクロの世界で働く、「強い力」と「弱い力」>



<弱い力>
太陽が燃えているのは弱い力のおかげ
「中性子のべータ崩壊などの放射線崩壊を引き起こす力」
ベータ崩壊は、中性子が陽子に変わり、それと同時に電子とニュートリノを放出する現象でした。一方、太陽の中では4つの水素原子のうち2つが中性子に変わってヘリウム原子になり、陽電子とニュートリノが放出されています。かたや「中性子→陽子」、かたや「陽子→中性子」と方向は逆ですが、それを引き起こすのはどちらも同じ力。太陽が毎秒50億キログラムもの質量をエネルギーに変えてくれるのは、弱い力のおかげなのです。

弱い力の届く距離は強い力よりもはるかに短いことがわかっている。その力を運ぶ粒子は中間子と比較にならないほど「重い」と予想されます。重い粒子ほど過疎器での検出が難しい。そのため、弱い力を伝えるボソンは、発見までに時間がかかったのです。1930年にその存在がよげんされて、1963年に発見された。

2011年2月20日日曜日

湯川理論から小林・益川理論へ

「宇宙は何で出来ているのか」----素粒子物理学で解く宇宙の謎 
村山 斉著

第4章  湯川理論から小林・益川理論へ
強い力、弱い力
<ミクロの世界で働く、「強い力」と「弱い力」>


未知の粒子の重さを予言していた湯川理論
「強い力」が届く範囲は原子核の直径程度だと考えられます。これは、その力を伝える粒子が重いことを意味します。
陽子おエネルギーを「寸借」して中間子をつくります。その力の到達距離が短いということは、借りたエネルギーを返すまでの時間が短いということにほかなりません。すると、時間と不確定性関係から、借りるエネルギーは大きくなります。そして、エネルギーが大きいということは、相対性理論から質量が大きいということです。

湯川粒子はアンデス山頂で見つかった
ミューオンはその予言どおりの重さでしたが、性質はどうみても「電子のお兄さん」のようなものでした。それにミューオンは「強い力」を伝えません。それを確かめたのは、イタリアの物理学者でした。ともかく、ミューオンは湯川理論が予言した中間子ではありませんでした。

ある研究グループがふと気がつきました。
「中間子はミューオンよりも寿命が短いので地上まで届かないのではないか」というのです。
ミューオンは宇宙線から検出されましたが、実際に宇宙から降り注ぐ粒子はほとんどが陽子です。陽子が上空で空気の原子核と反応して、ミューオンが出来る。そこから地上に降ってくる〔しかも相対性理論どおりに時間が遅れて寿命が延びる)ので、そんなに長生きの粒子ではないものの、地上に届くまで壊れません。ならば、中間子の寿命がミューオンより短いとしても、もっと高いところで探せば見つかる可能性があります。そう考えたイギリスの物理学者パウエルは南米のアンデス山脈の山頂(標高約5000メートル)まで登りました。
そして、1947年、強い力に反応する「湯川粒子」が見つかり、「パイ中間子(パイオン)」と名付けられた。宇宙から降ってきた陽子は、上空で窒素や酸素の原子核とぶつかってパイオンになります。しかし、その寿命はミューオンも100分の1程度しかないので、光速のおかげで時間が遅れても地上まで届きません。途中で壊れたパイオンが、ミューオンとなって地上にやってくるのです。
この発見で、湯川さんは2年後の1949年にノーベル賞を受賞しました。
発見したパウエルも、翌1950年に受賞しています。

新粒子発見ラッシュで研究者たちは大混乱
この後、パイオン同様、強い力に反応する粒子が次々と見つかった。
「デルタ」と名付けられた粒子は、パイオンを陽子にぶつける実験で検出された。「寿命の短い粒子ほどつくりやすい」という話をしましたが、このデルタはまさにそういう粒子です。せっかく実験室でつくってもすぐに壊れてしまうのです。この時期に検出された新粒子を一括して「ハドロン」と名付けられた。
ハドロンは、その重さによって、「メソン(中間子)」と「パリオン(重粒子)」の2種類に分かれる。

「なぜか壊れない粒子」の謎をどう説明するか
同じ時期に見つかった奇妙な粒子は、宇宙線の中から見つかった「v粒子」と名付けられた。寿命がやけに長い。デルタと比べると、13桁も長い。
v粒子は強い力でできたことは間違いない。しかし、強い力で出来た粒子は、みなデルタのように短命になると思われていました。それなのに、v粒子はなかなか壊れないのか?
そこで、この現象を説明する理屈として考え出されたのが、「ストレンジネス」(奇妙さ)という性質です。これは一種の「保存量」のことです。

陽子の寿命は宇宙の歴史よりとんでもなく長い
陽子は陽電子に壊れません。そこで、シュトウッケルベルクという物理学者が考え出したのが、「バリオン数」という保存量でした。
陽子のバリオン数は「1」、電子と陽電子は「0」とされました。だとすれば、陽子はバリオン数の保存則を破らない限り、陽電子に壊れることが出来ません。
まだ、陽子崩壊は観測されません。宇宙の歴史より、陽子の寿命のほうが24桁も長いのです。

思いつき自体がストレンジなストレンジネス保存の法則
陽子の「バリオン」にあたる保存量として考えられたのが、「ストレンジネス」でした。ストレンジネスは、強い力では保存されるが、別の力では保存されない。その別の力が「弱い力」です。
v粒子はストレンズネスがあるので強い力では崩壊しないが、やがて弱い力の作用で壊れてしまうーこれが、「西島=ゲルマンの法則」の出発点でした。
一見その場しのぎのように見えるストレンズネスも、今ではその思いつきが正しかったことがわかっています。

陽子・中性子はクォーク3つ、中間子はクォーク2つ
1956年、「坂田モデル」=たくさん存在するハドロンがすべて素粒子だとは思えないので、陽子・中性子・ラムダ粒子の3つを基本粒子だと考え、ほかのハドロンとは区別する。3つ目の「ラムダ粒子」とは、v粒子が「逆v字」に分かれた後の片割れです。(もう一方はK中間子)。従って当然、「ストレンジネス」を持っていると考えられます。
同じ時期に「クォーク理論」=アメリカのツワイクが提唱した。
基本粒子を3つと想定するのは坂田モデルと同じですが、彼らはハドロンよりも小さい粒子だと考えた。

クォーク理論を裏付けた「11月革命」
1974年11月、アメリカ東海岸ニューヨーク州のブルックヘブン国立研究所(BNL)では、標的に陽子をぶつけて電子と陽電子を生じさせる実験から、非常に寿命の長いメソン(=j粒子)を検出し、それが電子と陽電子に崩壊するのを確かめた。
11月12日論文を発表した。
西海岸のスタンフォード大学の加速器センター(SLAC)では、電子と陽電子を衝突させて、ハドロンを生じさせる実験から、やはり、寿命の長いメソン(=プサイ粒子)を検出した。
11月13日論文発表した。

強い力を伝えるのはグルーオン


クォークを取り出せないのはグルーオンの色荷のせい
クォークを取り出せないのは、強い力を伝えるグルーオンが、それ自体も「色荷」を持っていて、グルーオンがぐるを吸ったりはいたり出来るのが原因です。
ハドロンからクォークを取り出そうとして引っ張ると、クォークとクォークのあいだを行き来するグルーオンたちがお互いをお強い力で引っ張り合います。このとき働く力は、クォークとクォークの距離が離れるほど、強くなる。というわけで、クォークはハドロンの中に閉じ込められ、外へ出ることが出来ません。
また、逆にエネルギーを高めるほど(距離が近くなるほど)クォークがほぼ自由に動きます。

クォークが元気だから体重が増える?
陽子と中性子の質量は当然それを構成するクォーク3つの合計になるわけですが、これはクォークの運動エネルギーの合計です。ハドロンの内部では、クォークがグルグル動き回っていて、「E=m2」の公式どおり、そのエネルギーが質量としてカウントされるのです。
もちろん私達の体もハドロンのかたまりみたいなものですから、全身でクォークが運動しています。

2011年2月15日火曜日

「4つの力」の謎を解く



「宇宙は何で出来ているのか」----素粒子物理学で解く宇宙の謎 
村山 斉著

 第三章「4つの力」の謎を解く


<重力、電磁気力、強い力、弱い力ー量子力学>

自然界では、物質間でいくつかの力が働いています。
その一つは、「重力」です。物が地面に落ちることや、自分が地に足をつけて歩くことなど。その不思議な現象を、アインシュタインは「重力が空間を曲げるのだ」と説明した。

もう一つは、磁石のS極とN極、電気のプラスとマイナスが引き合う現象です。
重力と違って、こちらは「引力」だけではありません。S極とS極、マイナスとマイナスなどの場合は、逆に「斥力」が働いてお互いが離れようとします。

かつて電気と磁石の力はまったく別のものだと思われていた。それが同じ力であると見抜いて「電磁気力」に統一したのは、19世紀の物理学者マクスウェルです。電磁気力はボソンの一種である。

自然界で働く力は、目に見えるマクロの世界では、重力と電磁気力があり、それ以外に陽子と中性子(と、それを構成するクォーク同士)をくっつける力があり、

名前は「強い力 strong interaction 」=「強い相互作用」
もう一つ、「弱い力 weak  interaction 」です。
弱い力はすべての粒子に働きます。
自然界に存在するこの四つの力を、たった一つの原理で説明していきます。

力は粒子のキャッチボールで伝達されると考える

質量(m)はエネルギー(E)に変えられるという大発見。
反対にエネルギー(E)は質    量(m)にも変えられる(物質の質量は変化する。)「質量保存の法則」が覆された。
「光速度不変の原理」  光速は宇宙の「制限速度」      

性質は同じで電荷が反対の「反物質」
1955年、反陽子と反中性子も発見された。(バークレーの粒子加速器)光速近くまで加速した陽子を標的にぶつけることで、反陽子が生まれ、つくられた反陽子が別の陽子に出会うと、こんどは  対消滅してエネルギーに戻りました。さらに、そのエネルギーはまた質量に変換され、さまざまな種類の粒子が生まれます。
アインシュタインの理論どおり、「質量はエネルギーになり、エネルギーは質量になる」のです。

不確定性関係ー位置と速度は同時に測れない?
ミクロの世界では、粒子の正確な位置と速度を同時に測定することができない。(ハイゼンベルク)
△×(位置の曖昧さの幅)×△p(運動量の曖昧さの幅)〉h(ブランク定数)

私たちの身の回りにある物体も、顕微鏡の解像度をあげてズームインしていくと、実はわずかに揺らいでいます。

エレクトロニクス技術として実用化された「トンネル現象」
江崎玲於奈氏のノーベル賞を受賞したトンネルダイオードも、この原理をおうようしたものです。
△E(エネルギーの曖昧さの幅)×△t(時間の曖昧さの幅) 〉h(プランク定数)

「時間」の幅を狭めると、「エネルギー」の幅が大きくなる。逆に「時間」の幅を広げると、「エネルギー」の不確定性は小さくなるのです。

コペンハーゲン解釈ー神はサイコロを降るらしい
撃ち込んだ電子は一つ一つが「波」の広がりを持っており、それが壁に当たって観測された瞬間、一点にキュとまとまる。つまり観測者がそれを「見る」までは位置が決められないということ。
電子にかぎらず、あらゆる粒子は、観測されていないときは「波」なので「どこにあるか」は決められない。ーコペンハーゲン解釈

同じ場所に詰め込めるボソン、詰め込めないフェミにオン
「パウリの排他原理」
電子、ニュトリノ、クォークなどの素粒子は同じ場所に一つしか置けません。一方、力を伝えるボソンは、同じ場所にいくらでも詰め込める。これは両者の「スピン」の違いによるものです。スピンとは、素粒子の回転を表す物理量のこと。
フェミオンとボソンのスピンは何がちがうのか?
スピンが反整数(奇数÷2)になるのがフェミオン整数(偶数÷2)になるのがボソンです。

特殊相対性理論と量子力学を融合し、それをさらに電磁気学で統一したのが「量子電磁力学」なのです。

原子と原子は電磁気力でくっついている
電磁気力がないとあらゆる物質が原子レベルまでバラバラになってしまうので、私たちの体も存在しません。
「素粒子が力を伝える」とはどういうことか?

電磁気力は粒子が光子を吸ったり吐いたりして伝わる
荷電粒子(電子や陽子など電荷を持つ粒子)のまわりに電場が生じるとはかんがえません。そこで「光子」を交換していると考えます。「光子」は光として目に見えません。そのため、「仮想光子」とか、「バーチャル光子」とよぶこともあります。
その光子をつくるにはエネルギーが必要です。
なにもない空間からエネルギーを借りてきて、光子を作ります。荷電粒子がつくった光子を吐き出し、それをほかの荷電粒子が吸い込むことで、両者の間に力が働く。量子電気力学では電磁気力をこのような光子の交換として考えるのです。

電磁気力の届く距離も不確定性関係で決まる
距離が近い荷電粒子の間では、高エネルギーの光子をやりとりできるということです。量子力学では、荷電粒子同士の相互作用を、このように「光子の交換」で説明します。これを図示するのが、「ファイマン・ダイヤグラフ」です。
ファイマンは、朝永振一郎さんらとほぼ同時期に量子電気力学を完成させ、1965年にノーベル賞を共同受賞した物理学者です。

物理学史上もっとも精密な理論値
1933年ー電子1つの磁石の強さを「g=2」と予言していた。
しかし実際にg因子の大きさを計測してみると、ピッタリと整数の2にはなりません。0.1%ほどのズレがあったのです。そのズレを理論的に説明したのが、朝永振一郎、ファインマン、それにシュウィンガーの3人がほぼ同時期に指摘したのは、「バーチャル光子を放出した電子が、それを再び吸収することも考えなければいけない」ということです。
このズレを8次まで補正して計算したのが、コーネル大学の木下東一郎教授のグループです。スーパーコンピューターで何ヶ月もかけて計算した結果、次のような理論値が出ました。
 g/2=1.001159652182

一方、ハーバードの実験グループが出した計測値は次のようです。
g/2=1.001159652180

これはおそらく、物理学史上最高精度の一致でしょう。

バーチャルな光子の交換という話は、確かに眉唾な感じがするところもあるのですが、それを受け入れさえすれば、ここまで精密な予言能力を持つ理論をつくることができます。これが、「量子場の理論」であり、量子電気力学の成果です。

2011年2月12日土曜日

究極の素粒子を探せ!

「宇宙は何で出来ているのか」----素粒子物理学で解く宇宙の謎 
村山 斉著

第二章   究極の素粒子を探せ                              

アインシュタイン
「重力が空間を曲げるから引力が働く」

空間が曲がる以上、光も重力によって曲がって進むと考えた。ならば、大きな重力を持つ太陽の近くを通る星の光も曲がるはずです。このように、光が天体などの重力によって曲げられて、観測者からの見え方が変わることを、「重力レンズ効果」と言います。

遠くを見るとは昔の宇宙を見ること
宇宙で「遠くを見る」のが、「昔の光を見る」のと同じだということです。地球からの距離が遠ければ遠いほど、私たちは時間を逆行して「昔の宇宙」を見ていることになります。
望遠鏡で見えない領域があるのは、それが遠いからではなく、そこが「古い時代の宇宙」だから見えないのです。

宇宙の誕生は、今から137億年前と考えらています。そして、誕生してから2億年間の宇宙は、まだ星が出来ていない時代でした。そこのあったのは、バラバラの原子と暗黒物質だけでした。したがって、そこには「光」というものが一切ありません。いくら性能の良い望遠鏡を向けても、光を発しない「暗黒時代」の宇宙からは、何の情報も得られない。

ここで「素粒子物理学」の出番です。宇宙の「壁」の向こうでは、さまざまな素粒子が高エネルギー状態で飛び交っているが、これは地上の実験室で調べることが出来ます。

望遠鏡で見ることができない宇宙初期の姿を探る→これが現代の素粒子物理学なのです。
1,現代の素粒子物理学に繋がる考え方を最初に示したのは、哲学者デモクリスト
あらゆる物質がたった一種類の「粒子」から出来ていると考え、それを「原子atomon」と名付けた。のちに「アトム」の語源となった。

2,2000年後17世紀に脚光を浴びる。この時代、錬金術が盛んだった。
金や銀など、ほかの物質からはどうしても合成できない物質があることがわかりました。それを「元素」と名付けた。ロバートボイル(ボイル=シャルルの法則)

3,19世紀の初頭、ジョン・ドルトンが、元素はそれぞれ違った質量を持つ原子から成り、異なる元素が結合して分子を作るという説を唱えた。

4,その後、原子にも原子核と電子という構造があり、原子核は陽子と中性子から出来ていて、その陽子や中性子もバラバラにするとクォークになる。
クォーク=これ以上は分割できない素粒子
〈原子→原子核→陽子→中性子→クォーク〉

私たちはの体は、超新星爆発の星くずでできている
加速器の進化により原子には多くの種類(元素)があることがわかりました。自然界に存在する元素の中で一番大きいのは、原子番号92のウランです。

物質は構成せず「力」を伝達する素粒子もある。

3世代の素粒子(宇宙を構成する素粒子=フェルミ粒子)
第一世代=電子、電子ニュートリノ、アップクォーク、ダウンクォーク
第2世代=ミューオン、ミューニュートリノ、チャームクォーク、ストレンジクォーク、
第3世代=タウオン、タウニュートリノ、トップクォーク、ボトムクォーク

これ以外に「ボソン(ボース粒子)」という言葉で分類される素粒子が存在する。
排他原理に従わず、同じ場所にいくらでも詰め込めるのがボソンで、光はボソンの一種である。
陽子と中間子の間で「力」を伝達し、両者をくっつけている粒子=パイ中間子
パイ中間子を構成するクォークが、「力」を伝達する素粒子を持っている。


この「力を伝達する素粒子」こそが、ボソンである。

2011年2月10日木曜日

2011年2月10日(木)
「宇宙は何で出来ているのか」----素粒子物理学で解く宇宙の謎
村山 斉著

第一章 宇宙は何で出来ているのか

宇宙という書物は数学の言葉で書かれている。
10の27乗、10のマイナス35乗の世界。
世界(素粒子研究と宇宙研究)はウロポロスの蛇。ーーーー広大な宇宙の果てを見ようと思って追いかけていくとそこには素粒子があり、一番小さなものを見つけようと追いかけていくと、そこには宇宙が口を開けて待っている。

宇宙の研究
1.物質は何で出来ているのか
2.その物質を支配する「基本法則はいかなるものか」

宇宙に行くことは大変なことです。しかし見るだけなら、もっと簡単に出来ます。こちらから行かなくても、向こうから地球まで届く「光」さえあれば、望遠鏡の性能をどんどん高めることで、どんなに遠くの星でも観察出来るのです。
太陽の吸収線スペクトルの黒い部分の線、黒いということはその色の部分だけ「光がない」ということ。正確にいうと、あるものに光が「吸収」されてしまう為に地球まで届きません。
その光を吸収しているのが「原子」です。原子の種類によって吸収する波長が異なるので、ある色の波長が黒くなっていれば、その原子が「ある」とわかる。
そして太陽から来た光のどの波長が吸収されているかを分析したところ、間違いなく地球上と同じ種類の原子が存在することがわかりました。
まさに光を「見る」だけで、太陽という星がなに出で来ているかが判明したわけです。

ニュートリノ
宇宙から届くのは光だけではありません。地球上には無数の粒子が降り注いでいて、それが宇宙の成り立ちを教えてくれることもあります。
例えば、「ニュートリノ」
2002年に小柴昌俊氏がノーベル賞を受賞したのですが、この粒子の存在が理論的に「予言」されたのは、今から80年ほど前のことでした。

のちに「ニュートリノ」と名付けられた粒子が「存在するはずだ」と考えられたのは、そうでなければ、ある現象が「エネルギー保存の法則」と矛盾するからでした。全ての物理現象は、その前後でエネルギーの総量が同じでなければいけないのです。ある現象が起きた時に、全体のエネルギーが増えたり減ったりしてはいけないのです。

宇宙から飛んで来たニュートリノを世界で初めて捕まえたのは、日本の「カミオカンデ」という観測装置でした。岐阜県神岡鉱山の地下1000mの深さに作られたカミオカンデは、3000トンもの水を蓄えたタンクと、1000本の光電子増倍管からなる巨大な装置です。
ニュートリノは、宇宙から大量に降り注いでいます。私たちの体は1秒間に何十兆個もニュートリノを浴びていますが、他の物質とはほとんど衝突せずにスルスル通り抜けてしまうので、見つけるのは至難の業です。しかし、カミオカンデは、1987年2月、大量に蓄えた水中の電子と衝突したニュートリノを検出しました。その数は、たった11個でしたが、それだけでも「大量」と言えるのが、ニュートリノの扱いにくいところです。
この11個のニュートリノは、大マゼラン星雲で起きた超新星爆発によって生じたものでした。この新星爆発は、銀河全体よりも明るくなるほどに光を放ちましたが、その光のエネルギーは、爆発によって生じたエネルギーの1%にすぎません。爆発で出たエネルギーの99%を占めていたのがニュートリノです。
この功績によって、小柴氏はノーベル賞を受賞しました。
ちなみに、爆発した超新星は地球から16万光年も離れています。したがって、高速で進むニュートリノも、16万年かけてカミオカンデにたどり着きました。
また、宇宙に存在するニュートリノをすべて集めると、宇宙にある全ての星とほぼ同じ質量になるというのです。

全ての星を集めても、宇宙の全エネルギーの0.5%にしかならず、ニュートリノを加えても、たった1%にしかなりません。

アインシュタインの「E=mc2」(エネルギー=質量×光速2乗)という方程式によって、物質の質量はエネルギーに換算出来ることを示します。ですから、星の質量もエネルギーに換算して比較出来るのです。

星やガスなど宇宙にあるすべての原子をかき集めても、全エネルギーの4.4%程度にしかなりません。
20世紀には、「万物は原子からできている」と習ったが、しかし実は、「原子以外のもの」が、宇宙の約96%を占めているーそれがわかっったのは、2003年のことでした。

ダークマター
原子でない96%は、一体なんなのかわかっていません。でも、名前だけはついています。その一つが、暗黒物質(ダークマター)と呼ばれるものです。
正体は不明でも、それが「ある」ことはわかっている。
太陽系をここに引き止めている重力、それが暗黒物質です。暗黒物質は宇宙全体に偏在しており、それが宇宙全体の全エネルギーに占める割合は、約23%、原子のおよそ5倍です。
宇宙が膨張するにつれて、その密度が薄まるのです。

ダークエネルギー
原子と暗黒物質を合わせても、まだ、27%。それ以外の73%ーつまり宇宙の大部分ーは、「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」と呼ばれている。その正体はよわかりません。
宇宙という箱がいくら大きくなっても、その密度が薄まることがありません。

宇宙は加速しながら膨張し続けている。
宇宙は、ビッグバンから始まり、137億年かけて現在の大きさまで膨張したことが完全に裏付けされた。この膨張し続けるエネルギーが暗黒エネルギーだと考えられている。その膨張をグイグイ後押する謎のエネルギーが、宇宙の7割以上を占めているのです。

20世紀の終わり頃まで、宇宙はすべて「原子」で説明できると考えられていた。原子には原子核と電子があり、原子核は陽子と中性子で成り立っており、陽子や中性子はクォークという素粒子で出来ているーーー原子の発見から100年かけてここまでわかった。
全ての粒子には性質は同じで電荷だけが反対の「反粒子」が存在し、したがって全ての物質には「反物質」が存在します。ビッグバンの瞬間には、それが物質と同じだけ生まれたはずでした。しかし、現在の宇宙には、自然状態で存在する反物質が見あたりません。これも大きななぞです。
その存在が予言されているものの、、まだ見つかっていない粒子「ヒグス粒子」と呼ばれるものです。
「宇宙にはまだまだ謎がたくさんある!」